ウラメにでた日々

4月から短大生

日々のどうしようもないセイショウドウをつらつらと精神安定の為に小説も書いとるわ

誕生

病棟の中庭で遊んでいた幼いソメイヨシノが私たちの窓を羨ましそうに見上げている。

 

温暖化と騒がれるにはまだ早い。

異常気象より公害問題が矢面にされ、原子力が世界を救うと経済発展を目指していた。

富国強兵を作り上げた人たちが指揮を司っているのだから辿る道は同じに決まっている。

そんな毎日、人間にはよくある事だとソメイヨシノは四季を感じてみた。

 生まれるって肌寒い。今日もまた白い息吹が分娩室を満たしていく。

 

 

 

1人目、3月31日12時37分2000グラム

2人目、4月1日0時0分2100グラム

2人足して4100グラム。4月1日0時0分に生まれた未熟児だった。

 

未熟児とは一般的に2500グラム未満の新生児の事をいうらしい。私たちは未熟児の中でも健全だったから保育器にも入れられず心配もされなかった。

 

その病院のベテラン看護婦に『嘘みたいなふざけた子達だもんでー何ゆっても許されるらー。きっと、悪い女になるよ~』と言われた。

看護婦達の間でも『牡丹と薔薇』ならぬ悪女姉妹の誕生だとコールセンターでも私たちの話題で持ちきりだった。

三日間は『牡丹と薔薇』や『悪女姉妹』と呼ばれていたけど、幾つになっても女は飽きるのが早く何故か二人まとめてアップルちゃんに変わった。

(白雪姫の毒リンゴの意味も含めたダブルミーニングだに!と二本線のベテラン看護婦は自慢してたけど、なにとなにのダブルか全くわからん)

 

頬っぺたは確かに二人とも赤く、くっ付けるとちょうどリンゴの形に。。。なるはずがない。

母子手帳にもリンゴマークがやたら多く残っている。

 

その名残かお母さんは未だにリンゴ柄のものをたまに選んでくる。

(間違えてさくらんぼの時もあるけど、ニコイチだからちょうどいいと言い張る)

 

私はお揃いが好きじゃないけど、お母さんは当然のように飽きもせずオソロで買ってきた。

妹もしっかりリンゴのオソロを欲しがった。

(りんご=可愛い)というDNAはちゃんと妹に受け継がれた。

私たちは神経衰弱なら相当強い二人組だった。ババ抜きでもきっと強い。

ニコイチの良さをこれほど早く分かち合った親子は滅多にいないからおめでたいなと思った。

 

 

ブラウン管テレビの隣のナチュラルカントリーの木棚に、唐突な春一番の来訪で冬と春慌てふためいたお手製のリンゴ柄のツナギを来た乳児ペアの写真が未だに飾ってある。

 

オソロが好きじゃない私が唯一好きな写真だ。

 

と、そんな隙を見せたものだからソメイヨシノは拍手喝采を受け、例年通り直ぐ様1位に返り咲いた。

 

 

私たちは双子だった。

 

 

双子の誕生日は出生届けの日で決まるみたいで31日でも1日でも、二人を同じにするか分けることもできる。

 

 

でも何故かお母さんは私たちの誕生日をキッチリ分けた。

 私は3月31日で妹は4月1日になった。

 

 

私がお姉ちゃんになった。